千差万別の加齢臭

 憧れの女性が結婚されてると「やっぱりね~こんなサイコーな女男が放っておかないよ」という気持ちと、「いや最強最高の男じゃないと認められないんだが!?」という気持ちが両方溢れている。

 憧れの女性が「子供を産む時期について、夫と意見が分かれて喧嘩して泣いた」と言っておられて、詳しいことは外野なので全く分からないけどさ、いや、そんなことで泣かせるなよ夫……と思った。出産時期については女に100%決定権があると思っているので……。こんなに美しく、聡明で、バリバリ働いて夢を実現させてる最高な女性でも、そういうことで夫と喧嘩することあるんだ……て思っちゃった。こんな物語の主人公みたいな女性でも、揉めることあるんだ、って当たり前なんだけどさあ。

 

 

 ずっと面倒みてくれてるおじいさん先生が、「女の人は、一生食べていける専門職を身につけるか、家庭に入って子供を育てていくか、どちらかを選ばないといけないよ」と言う。この話は半年前に私が前職を退職したときからずっと先生としている。先生が私のことを思って言ってくれているのも分かるし、先生が言うのはある意味真理であることも分かる。先生は大学の先生で、評価される論文を何本も書いている。だから、私が文章を書いて生きていきたいというたび、「文章を書いて生きることほど辛いことはないよ」と何度も言う。「それは途轍もない忍耐が必要なんだよ」と。

 先生から見て私は勉強不足だし、我慢強くもないんだろう。それはそう。本当にそうだよ。私は怠け者だし、飽きっぽいし、ガッツはないよ。それでも文章を書くことをやめられない。先生は「あまり欲張ると不幸になるよ」と言う。「才能がないのに文章を書こうとする人は、やがて自分の中に書くべきものが何もないことに気づいて、頭が狂っちゃうんだよ」って。そうなんだろうなあ。そうなんだろうね。でもやめられないよ。多分。不幸になるかな。不幸になる覚悟が私にあるかしら。

 

 人は老いる。毎日お年寄りに接客をしているけど、本当に、本当に人は老いるんだ。目は見えなくなるし、手は震えるし、長時間歩いたり立ったりできなくなるし、新しい技術についていけなくなる。気が短くなって、興奮して怒ったりするし、迫り来る新しい時代に怯えたりする。しかもみんな均等に老いるんじゃなくて、老いるスピードが速い人も遅い人も、急に来る人もゆっくり来る人もいる。人の数だけ老いの数がある。老いた後、周囲の環境もさまざまある。金銭面の状況も全然違う。

 

 親が老いたらどんな風になるんだろう。私が老いたらどんな風になるんだろう。

 

 加齢臭、って言うけど、加齢臭って人によって全然違う。みんな、体の症状も生活習慣も違うから当たり前なんだけど。でも私はこの仕事を始めるまで、みんな同じにおいだと思っていたんだよね。

 

 子供のころ、よく遊んでくれた近所のおばあさんがいる。その人はずっと娘さんと二人で住んでたんだけど、娘さんはお嫁に行き、飼ってた猫は死んじゃった。さみしくて、野良猫を家に自由に出入りさせて、餌をやっている。猫トイレも用意している。避妊手術はしてないから、町内で猫がたくさん増えている。保健所の人もときどき見回りにきているようである。近隣住民から苦情もあったようである。そのお家の前を通ると、獣臭がする。公衆衛生の観点からいうと、良くないことなんだろう。私はそのお婆ちゃんのことが大好きでたまに会いにいくけど、「野良猫に餌をやるの、やめた方がいいよ」とは言えない。嫌われたくないから……。そのお婆ちゃんの底知れないさみしさみたいなものを感じている。

 

 老いってむずかしい。